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「烏龍茶が好きです」
【外国人との交流での失敗①】

2021年1月31日

私の夫は中国人だ。外国人である夫と話していると、私が日々いかに直接的な言い方をせずに話をしているかということに気付かされる。個人差はあるものの、婉曲表現を好み、はっきりとしたもの言いを避けるのは、日本人に共通の傾向と言っていいだろう。今回は、この傾向が原因で起こった私と夫の間のとあるささいなすれ違いについて紹介してみたい。

 夫と付き合ったばかりの頃の話だ。一緒に遊びに出かけると、夫は私に時折、喉が渇いていないか聞いてくれた。私と二人で出かけるとき、夫のリュックにはいつもペットボトルが二本入っていて、一方は夫の好きなコーラ、一方は私のためのお茶だった。私は頻繁に水分をとらないタイプなので、それほど喉は乾いていないことが多かったのだけれど、せっかく持ってきてくれたのだからと思い、勧められれば「ありがとう」と受け取っていた。その気遣いが嬉しかった。

 そうして差し出されるお茶を何度も受け取っているうちに私は気付いた。夫が時々自分用にコーラ以外の飲み物を用意してくることはあったけれど、私にくれるお茶は、決まって烏龍茶なのだ。最初は、夫自身がよく飲むのだろうと思ったけれど、彼が烏龍茶を特別好んで飲んでいる様子は見られない。「中国らしい飲み物」としてのチョイスなのだろうかとも思ったが、どうもしっくりこない。考えに考えて、ようやく行き当った。私は夫に一度、「烏龍茶が好き」だと言ったことがあったのだ。

 私と夫は同じ中国語会話サークルに所属していて、活動後、時々みんなで夜ご飯を食べに行っていた。他のメンバーがお酒を注文しているとき、私はあまり飲めないので、よく烏龍茶を頼んでいた。どのお店に入っても大抵メニューにあり、迷わずにさっと注文できるからだ。その様子を見ていた夫は、初めて私と二人で出かけた日に私にこう尋ねた。

「君が好きかと思って烏龍茶を持ってきたんだけど、これ、好き?」

私は烏龍茶が特別好きというわけではなかったけれど、特別嫌いというわけでももちろんなかった。気遣いを無下にしたくなくて、あまり深く考えずにこう答えた。

「うん、好きだよ、ありがとう」

かくして夫は、「烏龍茶が大好き」な私のために、毎回わざわざ重たい思いをしてペットボトルの烏龍茶を持参してくることになったのである。一方私は彼のそんな気遣いなど露知らず、「なんでこの人いっつも烏龍茶持ってくるんだろうなあ」などと思っていたのだ。……本当に申し訳ない。

 あのころから、およそ四年。結婚してからはもう一年半近い時間が経ち、何度もこうしたすれ違いを繰り返した結果、私は、夫と話すときにはかなりはっきりとものを言うようになった。これまで自分の希望を伝えるのがどちらかと言えば苦手だった私にとって、「これがいい」、「あれは嫌」というのを思うままに言う自分というのは、なんだか新鮮だ。度が過ぎてただの鬼嫁にならないように気をつけなければならないが、これからも夫と話すときは、この「もう一人の自分」を楽しんでいきたいと思っている。

◇◇◇

yuのメンバーが、自分のエピソードを交えて、「言語学習の経験」を紹介していきます。今回は「外国人との交流での失敗」について語ります。

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