外国人材の活用がうまくいっているかを尋ねると、多くの企業が、まず「辞めているか、辞めていないか」を考えます。もちろん、定着は大切です。ただ、企業へのヒアリングを重ねるなかで、離職率だけでは捉えられない問題も見えてきました。
外国人材が辞めずに働いていても、何年も同じ仕事を続け、次の役割に進めていない企業があります。高い定着率を維持していても、その状態が一人の担当者や先輩外国人材の献身によって支えられている企業もあります。
外国人材の採用後に見るべきなのは、離職率だけではありません。私は、次の3つに分けて考える必要があると思っています。
- 外国人材が、納得して働き続けられているか
- 外国人材が、能力を発揮し、次の役割を担えているか
- その状態を、特定の人の個人技ではなく、会社として支えられているか
それぞれが、定着・戦力化・組織化です。
「定着→戦力化→組織化」の順番ではない
定着してから戦力化へ進む、という流れはあります。一方、組織化は、戦力化のあとに行うものではありません。
同じ定着状態でも、その状態が会社の仕組みで支えられているのか、特定の担当者の個人技で支えられているのかによって、持続可能性は異なります。
定着とは、単に会社に在籍していることではない
本人が不満を言えずに残っているだけなら、安心はできません。ある日突然、退職や帰国を申し出ることもあります。
企業側が何もしていないわけではありません。月に数回の連絡、面談、従業員アンケートなど、かなり手厚く対応していても、本音が見えないことがあります。
仕事内容や負荷、上司・同僚との関係、給与や残業、寮や生活環境など、いくつかのずれが重なっている場合があります。
私は、外国人材の離職をすぐに「日本語の問題」と整理するのは危険だと考えています。
原因を日本語力だと決めれば、対策は日本語研修になります。しかし、本当の原因が仕事内容、残業、評価、寮生活にあるなら、日本語研修を増やしても解決しません。
戦力化とは、「何年いるか」ではなく「何を任せられるか」
外国人材が長く働いていると、それだけで戦力化できているように見えることがあります。しかし、在籍年数と戦力化は同じではありません。
- 本人に、次に期待する役割が示されているか
- 何ができれば次の役割に進めるか伝わっているか
- 上司から評価やフィードバックを受けられているか
- 日本語、技能、資格などの学習機会があるか
- 実際に新しい仕事を任せる機会があるか
外国人材を何年雇用しているかではなく、何を任せられるようになったかを見る。これが、定着と戦力化を分けて考える理由です。
組織化とは、手厚い支援を減らすことではない
空港への送迎、寮の準備、役所の手続き、通院への同行、生活トラブルへの対応。外国人材が日本で暮らし始める際には、企業側にさまざまな業務が発生します。
問題は、支援が手厚いことではありません。その手厚さが、誰か一人の経験や自己犠牲でしか続けられない状態になっていることです。
- どのような支援業務が発生しているのか
- 誰が一次対応するのか
- どの段階で人事や経営、外部機関へつなぐのか
- 担当者が不在でも対応できるか
- 外国人材が増えても続けられるか
自社の状態を考える4つの問い
- 外国人材が辞めるとき、企業は本当の理由を把握できているか
- 長く働く外国人材に、次に任せる役割が決まっているか
- 外国人材の支援や育成が、特定の人に集中していないか
- 担当者が不在になったり、外国人材が増えたりしても、同じ対応を続けられるか
対策を決める前に、課題の場所を見極める
現在地の把握は、それ自体が目的ではありません。対策を決め、実行し、結果を改善するための入口です。
外国人材が長く働く。力を発揮する。その状態を、会社として支え続けられる。採用後に目指すべきなのは、この3つがそろった状態だと考えています。

