組織化

定着率が高くても安心できない。外国人材対応の「特定担当者頼み」リスク

外国人材の定着支援というと、まず気になるのは「どれくらい辞めているか」ではないでしょうか。

離職が少なく、長く働いている外国人社員が多ければ、受入れはうまくいっているように見えます。

しかし、企業へのヒアリングを続ける中で、別の課題も見えてきました。

「外国人材は定着している。でも、その状態を維持するために特定の担当者が走り回っている」

というケースです。

高い定着率を支えていたのは、手厚い人的サポート

yuがヒアリングしたある製造業では、外国人材の定着率は非常に高く、他社への転職による離職もほとんど発生していませんでした。

背景には、会社によるかなり手厚い支援があります。

入社時の生活準備だけでなく、行政手続き、住居のトラブル、通院時のサポート、日常生活上の相談など、外国人社員が日本で生活するうえで困ったことに幅広く対応していました。

また、外国人社員と同じ外国籍の社員が、会社と外国人社員をつなぐ「ブリッジ役」として機能していました。

日頃から現場を回り、外国人社員の悩みや不満を聞く。日本人社員とのコミュニケーションで問題があれば間に入る。こうした対応が、外国人社員にとっての安心感につながっていたと考えられます。

強みだった「人」が、そのままリスクにもなる

一方で、ヒアリングを進めると別の側面が見えてきました。

外国人材に関する相談や対応が、ブリッジ役の社員や総務担当者、経営者など、限られた人に集中していたのです。

これは、現在うまく回っている間は大きな問題に見えません。

むしろ、「外国人社員のことをよく分かっている人がいる」「困ったらあの人に聞けばいい」というのは、企業にとって大きな強みです。

問題は、外国人材の人数が増えたときや、その担当者が不在になったときにも同じやり方が続けられるかです。

実際、この企業では過去に外国人材が大きく増えた時期があり、生活上の相談や病院対応などが重なったことで、管理側の負担が非常に大きくなった経験がありました。

現在も、担当者は外国人材対応だけをしているわけではありません。日本人社員を含む通常の総務業務を持ちながら、外国人社員から相談があれば対応しています。

定着率だけを見ると「成功企業」です。

しかし会社の運用という視点で見ると、特定の人の経験・語学力・善意によって成立している部分が残っているとも言えます。

「辞めない」と「会社として回る」は別の問題

yuでは、外国人材マネジメントを考える際、「外国人材が定着しているか」「外国人材が戦力として成長しているか」「その状態を会社として継続的に支えられるか」を分けて考える必要があると考えています。

特に3つ目の「会社として回るか」は、離職率だけでは分かりません。

たとえば、外国人社員からの相談はほぼ同じ担当者に来る。通訳できる社員が休むと対応が止まる。生活支援や行政手続きのやり方が担当者の頭の中にしかない。現場で問題が起きると、毎回人事や総務が直接対応する。外国人材を増やしたいが、担当者の負荷を考えると増やしにくい。

一つひとつは小さな問題でも、外国人材が増えるほど運用上の制約になっていきます。

属人化をなくすことが目的ではない

ここで注意したいのは、「何でもマニュアル化すればよい」という話ではないことです。

外国人社員が困ったときに、信頼して相談できる人がいることには大きな価値があります。

特に、本人の事情や文化的背景まで理解したうえで柔軟に対応する場面では、人による支援を完全に仕組みに置き換えることは難しいでしょう。

むしろ考えたいのは、「人にしかできない支援」と「会社の仕組みにできる業務」を分けることです。

たとえば、毎回発生する行政手続きや入社時の説明は、手順や資料を残す。簡単なコミュニケーションは翻訳ツールなどを使い、すべてを通訳担当者に集めない。現場で一次対応する内容と、人事・総務へ相談する内容を整理する。相談内容や対応方法を記録し、別の担当者でも過去の経緯を確認できるようにする。

こうした小さな整理だけでも、キーパーソンの負担を減らしながら、その人が持つ知見を会社に残しやすくなります。

定着率の次に見るべきもの

外国人材が辞めていないことは、もちろん重要です。

ただ、それだけで受入れ体制が持続可能とは限りません。

今回の企業ヒアリングから見えてきたのは、定着を実現している「理由」が、会社の仕組みなのか、特定の誰かの頑張りなのかまで見る必要がある、ということでした。

外国人材が5人のときには問題なくても、10人、20人と増えたときに同じ運用ができるのか。担当者が1か月休んでも回るのか。

外国人材の定着率が高い企業ほど、一度この視点から受入れ体制を見直してみる価値がありそうです。


外国人材の受入れ体制を、一度整理してみませんか

外国人材は定着しているものの、「特定の担当者がいないと回らない」「人数を増やしたときの負荷が心配」といった課題がある企業様も、現在の受入れ状況から一緒に整理します。yuの支援内容はこちらからご覧いただけます。

株式会社yu
執筆・監修|外山 一成

株式会社yu 代表。経営コンサルティングで培った課題整理の経験と、日本人・在留外国人双方との継続的な接点をもとに、外国人材の定着・戦力化・組織化を支援しています。