外国人材を長く雇用している企業では、次第にこんな課題が出てきます。
「後輩外国人を教えられる人を育てたい」
「日本人社員だけでなく、外国人社員にもチームを支えてほしい」
「将来的にはリーダーを任せたい」
採用して、辞めずに働いてもらう。
その次に企業が考えなければならないのが、「この人に次は何を任せるのか」という問題です。
企業へのヒアリングを行っていると、外国人リーダーの育成には一つの典型的なパターンがあります。
「日本語が一番できる人に、とりあえず外国人メンバーをまとめてもらう」
というものです。
確かに、通訳ができ、日本人社員との橋渡しができる人は重要です。
ただし、日本語ができることと、リーダーとして育っていることは同じではありません。
外国人材をリーダーへ育てるためには、大きく3つの視点から環境を考える必要があります。
役割・キャリア設計
評価・フィードバック
育成・学習支援
です。
そもそも「外国人リーダー」とは誰なのか
まず整理したいのが、会社としてどのような状態を「リーダー」と考えるのかです。
外国人社員の中で日本語が最も上手な人。困った外国人社員の相談に乗ってくれる人。日本人上司の話を他の外国人社員へ伝えてくれる人。
こうした役割は非常に重要です。
ただ、それだけでは「世話役」や「通訳役」に留まってしまう場合もあります。
リーダー育成を考えるなら、「一人でできる仕事が増える」「担当できる工程や業務が広がる」「後輩へ仕事を教えられる」「チームの問題を把握し、周囲と相談して解決できる」など、本人にどのような責任や役割を担ってもらいたいのかを考える必要があります。
私たちが意見交換した外国人材関連のコンサルタントによると、一部の企業では3カ年・5カ年の計画の中で、外国人材から何人のリーダー・管理職を登用するかをKPIとして設定しているケースもあります。
一方、目標人数を設定したからといって、自動的にリーダーが育つわけではありません。
担当者には目標達成へのプレッシャーがかかるものの、社内だけでは育成のロードマップを描ききれず、外部へ相談する企業もあるとのことでした。
つまり、外国人リーダー育成は、「候補者を選ぶ」だけの問題ではなく、会社としてどのように次の役割へ育てるかという人材マネジメントの問題でもあります。
1.役割・キャリア設計:まず「何のリーダーになってほしいのか」を分けて考える
一つ目は、役割・キャリア設計です。
ここで重要なのは、「リーダーになってほしい」という言葉だけでは、期待する役割が曖昧だということです。
私たちがヒアリングしたある製造業では、現場の先輩社員から「今後、こういう製品を作れるようになってほしい」といった技術面での成長イメージは伝えられていました。
つまり、①担当業務について習熟し、より高度な仕事を担えるようになるというキャリアです。
これは、製造部門や事業部門から見れば非常に重要な成長です。
一方、その企業では外国人社員が増える中で、②外国人社員の中で後輩を支え、周囲をまとめる役割を担う人材も必要になっていました。
新人外国人社員の相談に乗る。仕事や生活について後輩が困っていれば、必要に応じて会社へつなぐ。日本人社員と外国人社員の間を橋渡しする。
こうした役割は、①の「担当業務を習熟すること」とは別の能力です。
企業によっては、事業部門が期待する「仕事のプロとしての成長」と、人事・総務部門が期待する「外国人材の中でのリーダーとしての成長」の両方を考える必要があります。
どちらか一方だけを「リーダー育成」と捉えてしまうと、会社の期待と本人の役割がずれてしまいます。
ただし、「あなたは今日からリーダーです」と肩書きを与えればよいわけでもありません。
別の製造業では、日本語力の高い先輩外国人社員が自然と後輩の相談に乗り、生活面でもリーダー的な役割を担っていました。
一方で、「あなたはリーダー」と強く伝えすぎると、それ自体がプレッシャーとなり、本人が役割を敬遠してしまう場合もあるという話がありました。
大切なのは名称ではなく、本人の希望と会社の期待をすり合わせながら、何を任せるのかを少しずつ具体化することです。
2.評価・フィードバック:「評価制度がある」と「成長につながる」は同じではない
二つ目は、評価・フィードバックです。
会社として「この人はよく頑張っている」「次のリーダー候補だ」と思っていても、それが本人に伝わっているとは限りません。
ある製造業では、半年に一度、賞与を決めるための話し合いは行われていました。また、問題が発生すれば本人と直接話したり、必要に応じて通訳を介してコミュニケーションを取ったりしていました。
一方で、「今できていること」「次にできるようになってほしいこと」「次の役割へ進むために足りないこと」を日常的・タイムリーに伝える機会は十分ではありませんでした。
ここで重要なのは、評価制度が存在することと、本人の成長につながるフィードバックが行われていることは別だということです。
半年に一度評価を伝えるだけでは、その間に何を改善すればよいのか分かりません。
たとえば、「この工程は一人で任せられるようになった」「次はこの作業を後輩に教えられるようになってほしい」「今月はそのために、先輩と一緒に新人指導を経験してみよう」という形まで具体化すれば、本人も次に何をすればよいのか理解できます。
特にリーダー育成では、単に仕事ができるかだけではなく、後輩への教え方、周囲とのコミュニケーション、問題が起きたときの対応などについてもフィードバックする必要があります。
「評価をする」のではなく、次の役割へ進むために評価を使う。この違いが重要です。
3.育成・学習支援:「何を会社が支援するか」に一つの正解はない
三つ目は、育成・学習支援です。
外国人材の育成というと、日本語研修や資格取得支援が最初に浮かぶかもしれません。
もちろん、これらは重要です。
ただし、日本語研修を会社がどこまで負担するのか。資格取得費用をどこまで支援するのか。業務時間中に学習時間を設けるのか。といった具体的な支援方法には、一つの正解があるわけではありません。
企業によって、求める役割も、在留資格も、業務内容も異なるからです。
ある製造業では、これまで体系的な日本語学習支援はありませんでしたが、最近になって外部のオンライン日本語講習を導入し始めました。
一方、別の製造業では、外国人の先輩社員にも協力してもらいながら、特定技能2号の取得に向けた学習を支援しています。
重要なのは、「他社が資格取得支援をしているから、自社もやる」という発想ではありません。
先に、「この人に次はどのような役割を任せたいのか」を決める。
そのうえで、「その役割を担うために、どのような日本語力・技能・資格・経験が必要なのか」を考える。
そして、「そのうち、会社として何を支援するのか」を決める。
という順番です。
さらに、研修だけではリーダーは育ちません。
OJT、後輩指導、複数工程への挑戦など、実際の仕事の中で次の役割を経験する機会も必要です。
ある多品種小ロット型の製造業では、外国人材の戦力化について、一つの製品や工程だけを担当するのではなく、複数の工程へ仕事の幅を広げられる状態を理想として挙げていました。
つまり、育成を「研修を何回受けたか」で見るのではなく、実際に任せられる仕事が増えたかまで見る必要があります。
「日本語ができる人=リーダー」にすると何が起こるのか
外国人社員が増えてくると、日本語のできる人に頼りたくなるのは自然なことです。
しかし、
通訳ができる
=仕事を教えられる
=人を育てられる
=リーダーに向いている
とは限りません。
ある企業では、外国人社員が約20名まで増える中で、日本語のできる特定の外国人社員に情報伝達やフォローが集中し、次の世代のリーダーが育ちにくくなることが課題になっていました。
一人のできる人へ仕事を集めれば、当面は効率的です。
しかし、その状態が続けば、その人自身の負担が増えるだけでなく、次の候補者が経験を積む機会まで失われる可能性があります。
外国人リーダーを育てることと、優秀な外国人社員一人にすべてを任せることは別の話です。
「育てたら転職するのでは」という不安もある
企業へのヒアリングでは、「せっかく日本語や仕事を教えて、一人でいろいろできるようになったら、都会や他社へ転職してしまうのではないか」という声もありました。
これは、外国人材を育成する企業にとって現実的な不安です。
ただ、だからといって育成を止めてしまえば、会社の中で外国人材が次の役割へ進む道もなくなってしまいます。
だからこそ、
成長した先にどんな役割があるのか。
会社がその成長をどう評価するのか。
本人にとって、この会社で成長し続ける意味は何なのか。
まで一緒に考える必要があります。
「育成・学習支援」だけを単独で行うのではなく、「役割・キャリア設計」「評価・フィードバック」とつなげることが重要です。
まとめ|外国人リーダーは「選ぶ」のではなく、次の役割へ進める環境の中で育つ
外国人材のリーダー育成というと、「誰をリーダーにするか」に目が向きがちです。
しかし、本当に必要なのは、
役割・キャリア設計
→ 評価・フィードバック
→ 育成・学習支援
をつなげ、本人が少しずつ次の役割へ進める環境を作ることです。
そして最初の「役割」についても、担当業務をより高いレベルで担うことと、後輩外国人材を支え、周囲をまとめることを分けて考える必要があります。
日本語が一番できる人をリーダーにする。長く働いている人をリーダーにする。研修を受けさせてリーダーにする。
それだけでは、継続的なリーダー育成にはなりません。
まずは自社の外国人社員について、「この人に、1年後は何を任せたいのか」を具体的に考えてみる。
そこから逆算すると、今伝えるべき評価、経験してもらう仕事、必要な学習機会が見えやすくなります。
外国人材を「支援される側」のままにせず、徐々に周囲を支えられる側へ。
そのための環境を会社として作っていくことが、外国人材のリーダー育成の第一歩です。
外国人材が定着したものの、「次にどの役割を任せればよいのか」「リーダー育成をどう進めればよいのか」を整理しきれていない企業さまへ。
yuでは、外国人材の現在の活躍状況と企業側の育成環境を整理し、次の役割へ進むために優先すべき課題を一緒に検討しています。

