定着

外国人社員との面談で何を聞く?「大丈夫です」で終わらせない4つの確認軸

外国人社員との定期面談で、こんなやり取りになっていないでしょうか。

「仕事は大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」

「困っていることはありませんか?」

「特にありません」

それなら問題はない――。

そう判断してよいのでしょうか。

外国人社員との面談で重要なのは、面談を実施していることではなく、本人の現在の状態を会社がどこまで把握できているかです。

厚生労働省の「令和7年外国人雇用実態調査」では、仕事上のトラブルや困りごとが「あった」と回答した外国人労働者のうち、15.8%が「トラブルや困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった」と回答しています。

会社側が「相談できる環境は用意している」と考えていても、本人からすると相談先が分からない。あるいは、相談できても話してよい内容か判断できないことがあります。

私たちがこれまで外国人材を雇用する企業へヒアリングしてきた中でも、企業側では問題なく運用できていると思っていた一方で、外国人材側から見ると、小さな認識のズレが積み重なっていたケースがありました。

そこで本記事では、外国人社員との面談で確認したい内容を、「業務」「人間関係」「給与・働き方」「私生活」という4つの確認軸から整理します。

なお、この4つは「外国人社員が辞める原因は必ず4種類に分類できる」という学術的な分類ではありません。

面談で重要な論点を取りこぼしにくくするための、実務上の確認軸としてご紹介します。

目次

  1. 面談をしていることと、状態を把握できていることは違う
  2. 「大丈夫ですか?」だけでは見えにくい
  3. ① 業務|仕事の内容・負荷に想定外はないか
  4. ② 人間関係|困ったときに頼れる関係があるか
  5. ③ 給与・働き方|契約どおりでも期待とズレていないか
  6. ④ 私生活|仕事の外で抱えている問題はないか
  7. 面談後に「聞いて終わり」にしない
  8. 定着確認とキャリア面談は目的を分ける
  9. まとめ

面談をしていることと、状態を把握できていることは違う

外国人材を雇用する企業の中には、定期的な面談や日常的な声かけをすでに行っている会社も少なくありません。

厚生労働省も、外国人材の受入れ・定着について、募集・受入れ・就労中の各段階で企業が行う対応をまとめたマニュアルを公開しており、面談や継続的なコミュニケーションも重要な取り組みとして位置づけています。

ただし、

「面談を実施した」=「本人の状態が分かった」

ではありません。

私たちが過去に企業ヒアリングを行った際にも、定期面談や日常的なフォロー自体は行われていても、外国人材が抱える問題を網羅的に把握するところまでは至っていないケースがありました。

たとえば、本人が「仕事は大丈夫です」と答えていても、

仕事そのものには慣れたが、想定以上に身体への負担が大きい。

仕事上の関係には問題がないが、休憩時間には会話へ入れず孤立している。

給与は契約どおり支払われているが、想定していたほど残業がなく、期待していた収入に届かない。

会社では問題なく働いているが、仕事以外の生活では孤独や家族の問題を抱えている。

といったことがあります。

「問題がありますか?」と一括りに聞くのではなく、確認対象を分けて聞くことが重要です。

「大丈夫ですか?」だけでは見えにくい

これは、「外国人社員は本音を言わない」という単純な話ではありません。

日本人社員でも、上司から突然「何か困っている?」と聞かれて、その場ですべてを整理して話せるとは限りません。

外国人社員の場合には、そこへさらに、

「日本語で正確に説明できるだろうか」

「不満を言うと評価に影響しないだろうか」

「会社に迷惑をかけると思われないだろうか」

「この話は誰まで共有されるのだろうか」

といった不安が重なる場合があります。

厚生労働省の最新調査でも、仕事上のトラブルや困りごとがあった外国人労働者の中で、相談先が分からなかったという回答が一定数存在します。

だからこそ、「困っていますか?」と本人に問題を整理してもらうのではなく、具体的な事実から一緒に確認する方が状況を把握しやすくなります。

抽象的な聞き方 具体的な聞き方
仕事は大丈夫? 入社前に考えていた仕事と、実際に働いてみて違ったところはありますか?
人間関係は大丈夫? 仕事で分からないとき、最初に誰へ聞いていますか?
給料に問題はない? 入社前に想定していた毎月の収入と、実際の収入に違いはありますか?
生活は大丈夫? 休日は普段どう過ごしていますか?困ったとき相談できる人はいますか?

① 業務|仕事の内容・負荷に想定外はないか

一つ目は、業務です。

ここで確認するのは、「仕事ができているか」という評価だけではありません。

入社前に本人が想像していた仕事と、実際に働いてみた仕事との間にズレがないかを確認します。

これまで私たちが行った製造業へのヒアリングでは、来日前には仕事内容の身体的な負荷まで十分にイメージできておらず、実際に重い物を扱う仕事に就いた後、腰など身体への負担が問題になったケースがありました。

「日本へ行けば働いて稼げる」という期待はあっても、毎日どのような姿勢で、どの程度の重量物を扱い、どのくらい身体を使う仕事なのかまでは、本人が具体的に想像できていない場合があります。

また別の製造現場では、作業手順自体は翻訳できても、「なぜその品質基準を守る必要があるのか」という背景が十分に伝わらず、同じミスが繰り返されるという話もありました。

そのため、面談では、

「入社前に聞いていた仕事と、実際の仕事で違ったところはありますか?」

「身体的に一番大変な作業はどれですか?」

「仕事の中で、なぜこのやり方をするのか分からないことはありますか?」

「説明を聞いたときは分かったけれど、実際にやると難しかった仕事はありますか?」

などを確認します。

「仕事ができる・できない」を確認する評価面談とは分けて、本人から見た業務の実態と期待との差を確認するのがポイントです。

② 人間関係|困ったときに頼れる関係があるか

二つ目は、人間関係です。

「職場の人とは仲良くしていますか?」

と聞いて、「はい」と返ってきたから問題なし、と判断するだけでは十分ではありません。

過去に私たちがヒアリングした飲食店では、外国人スタッフが休憩時間に日本人スタッフの会話へ入りづらく、会話の内容が十分に分からないまま笑ってその場をやり過ごしていることがありました。

一方、その店舗では店長が外国人スタッフへ意識的に話しかけたり、出身国について質問したりすることで、職場へ入りやすくする工夫も行われていました。

また、同じ会社でも、店舗や上司によって外国人スタッフへの接し方に差が生まれるという話もありました。

つまり重要なのは、単に「仲が悪くない」ことではありません。

仕事で必要なときに質問できるか。困ったときに相談できるか。職場の中で、自分だけ取り残されていると感じる場面がないか。

を確認することです。

たとえば、

「仕事で分からないことがあったら、最初に誰へ聞きますか?」

「休憩時間は普段誰と過ごしていますか?」

「職場で話しかけやすい人は誰ですか?」

「注意されたときに、なぜ注意されたのか分からなかったことはありますか?」

と聞くことができます。

一人で過ごすこと自体が問題なのではありません。

見るべきなのは、本人が必要なときに必要な人へアクセスできる状態になっているかです。

③ 給与・働き方|契約どおりでも期待とズレていないか

三つ目は、給与・働き方です。

ここは、会社側と本人側で認識がずれやすいポイントです。

会社からすると、

「給与は契約どおり支払っている」

「労働時間も適正に管理している」

のであれば、特に問題はないように見えます。

しかし、本人が入社前に想定していた収入とは違う可能性があります。

過去の企業ヒアリングでは、労働時間を適正に管理しているため残業が少ないことが、外国人材本人からすると「想定していたほど稼げない」という不満につながっているケースがありました。

別の飲食現場では、閑散期に店舗側がシフトを減らすことによって本人の収入が下がり、より働ける勤務先へ移る要因になるという話も出ています。

つまり、「会社が約束を守っているか」と「本人の期待と一致しているか」は別の問題です。

そのため、

「入社前に考えていた毎月の収入と、実際の収入に違いはありますか?」

「今の残業時間について、来日前に考えていたものとの違いはありますか?」

「毎月、どのくらい働きたいと考えていますか?」

「給与明細で意味が分からない項目はありますか?」

などを確認します。

これは「残業を増やせばよい」「給与を上げればよい」という話ではありません。

会社として対応できない内容であっても、本人がどのような前提で今の給与・働き方を見ているのかを知ることには意味があります。

④ 私生活|仕事の外で抱えている問題はないか

四つ目は、私生活です。

外国人社員の場合、仕事上は問題なく働いていても、生活上の問題がその後の勤務や定着へ影響することがあります。

過去の製造業ヒアリングでは、工場と自宅を往復するだけで地域との接点がほとんどなく、母国の食材なども手に入りにくい環境の中で、ホームシックや孤独が強くなるという話がありました。

また別の企業では、母国の家族の事情によって1〜2か月単位で帰国するケースもあり、会社側からすると将来の役割配置を考えるうえでも影響が出ていました。

さらに、行政手続きや病院など、日常生活の困りごとは登録支援機関などへ任せているものの、実際には十分に対応されず、最終的に企業担当者が本来業務を止めて対応するケースも聞いています。

だからといって、会社が本人の私生活へ必要以上に入り込む必要はありません。

確認したいのは、

今、生活面で仕事に影響しそうな問題があるか。そして、困ったときに相談できる人・場所があるか。

です。

たとえば、

「休日は普段どのように過ごしていますか?」

「仕事以外で最近困っていることはありますか?」

「病院や役所へ行く必要があるとき、一人で対応できますか?」

「日本で、会社以外に相談できる人はいますか?」

「家族のことで、今後仕事へ影響しそうな予定や心配はありますか?」

などを確認できます。

会社がすべてを解決する必要はありません。

「これは会社へ相談する」

「これは登録支援機関へ確認する」

「これは行政や外部窓口へつなぐ」

と、相談先を整理するだけでも本人の安心と会社側の負担軽減につながります。

確認軸 ヒアリングで実際に見えてきたズレの例 質問例
業務 想像以上の身体負荷、仕事の「なぜ」が分からない 入社前に考えていた仕事と、実際の仕事で違ったところはありますか?
人間関係 休憩時間の孤立、上司・店舗による接し方の差 仕事で分からないとき、最初に誰へ聞いていますか?
給与・働き方 残業・シフトが期待より少なく、想定収入とのズレが出る 入社前に想定していた収入と、実際の収入に違いはありますか?
私生活 職場と自宅だけの生活、ホームシック、家族事情、相談先不足 仕事以外で困ったとき、相談できる人や場所はありますか?

これらはすべての会社、すべての外国人社員に当てはまるという意味ではありません。

重要なのは、自社ではどのようなズレが起きているのかを具体的に確認することです。

面談後に「聞いて終わり」にしない

もう一つ重要なのが、面談後です。

話を聞いた。

議事録を残した。

次回の面談まで待つ。

これだけでは、本人からすると「話したけれど何も変わらなかった」と感じる可能性があります。

もちろん、本人から出た要望すべてに応える必要はありません。

面談後には、少なくとも、

何を会社で確認するのか。

何は対応できないのか。

誰が確認するのか。

いつ本人へ返答するのか。

を決めます。

たとえば「もっと残業したい」という希望に応えられない場合でも、会社としてなぜ難しいのかを説明し、本人が想定していた収入との違いを認識しておくことはできます。

生活上の問題で会社だけでは対応できない場合には、適切な外部窓口へつなぐこともできます。

面談は、本音を聞き出すイベントではなく、会社と本人の認識のズレを確認し、次の行動につなげる仕組みと考える方が実務では使いやすくなります。

定着確認とキャリア面談は目的を分ける

今回の4つの確認軸は、主に「辞める前に現在の状態を把握する」ためのものです。

一方、外国人社員が定着した後には、

「次にどんな仕事を任せるのか」

「3年後にどんな役割を担ってほしいのか」

「そのために何を経験し、何を学ぶ必要があるのか」

という戦力化の話も必要です。

定着面談の中で、困りごとの確認と評価・キャリアの話をすべて一度に行おうとすると、本人側も「これは相談なのか、評価なのか」が分かりにくくなる場合があります。

まず現在の仕事・人間関係・給与や働き方・私生活についての状態を確認する。

そのうえで別途、将来の役割やキャリアを確認する。

「辞めないための状態確認」と「次の役割へ進むための成長確認」は、目的を意識して分ける。

そうすると、面談をより具体的なマネジメントへつなげやすくなります。

まとめ|面談回数より「何を確認できたか」を見る

外国人社員との面談で重要なのは、

「3か月に1回実施している」

「半年に1回実施している」

という回数だけではありません。

確認したいのは、

業務

人間関係

給与・働き方

私生活

について、会社と本人との間にどのようなズレがあるかです。

そして、「大丈夫です」と言われたから終わるのではなく、具体的な事実を一つずつ確認する。

必要な課題が見つかったら、誰が何をするか決める。

それが、面談を「実施している」という状態から、辞める前に状態をつかむ仕組みへ変えていく第一歩です。


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※記事内の企業事例は、株式会社yuがこれまで実施した複数の企業ヒアリング内容を、企業・個人が特定されない形に匿名化・要約して掲載しています。

株式会社yu
執筆・監修|外山 一成

株式会社yu 代表。経営コンサルティングで培った課題整理の経験と、日本人・在留外国人双方との継続的な接点をもとに、外国人材の定着・戦力化・組織化を支援しています。