外国人社員と働く中で、
「何度伝えても、なかなか行動が変わらない」
「本人は『分かりました』と言っていたのに、伝わっていなかった」
「評価面談はしているが、成長につながっている感じがしない」
と感じたことはないでしょうか。
外国人社員へのフィードバックというと、「文化が違うから伝え方を変えなければ」と考えがちです。
もちろん、言語や文化的な背景の違いを考慮することは重要です。
ただ、それ以前に確認したいことがあります。
会社として、本人に「何を」「いつ」「どう」伝えるのかが整理されているでしょうか。
私たちが外国人材を雇用する企業へヒアリングしていると、評価制度は存在していても、日常のフィードバックは十分ではないというケースがあります。
外国人社員の育成を考えるなら、「評価すること」と「成長のためにフィードバックすること」を分けて考える必要があります。
「評価」と「フィードバック」は同じではない
たとえば半年に一度、上司と面談して人事評価を伝える。
これは重要です。
一方、その半年間に、
「何ができるようになったのか」
「どこを改善すればよいのか」
「次に何ができるようになってほしいのか」
をほとんど伝えていなければ、本人は日々の仕事の中で軌道修正できません。
| 評価 | フィードバック | |
|---|---|---|
| 主な目的 | 一定期間の成果を判断する | 次の行動・成長につなげる |
| 主なタイミング | 半期・年次など | 業務の直後・定期的 |
| 伝える内容 | 結果・評価・処遇など | できたこと・改善点・次の行動 |
| ゴール | 評価結果への納得 | 本人が次に何をすればよいか分かる |
両者はもちろん連動します。
しかし、「半年に一度評価しているから、フィードバックもできている」とは限りません。
JETROも、外国人材の育成・定着において、評価体系とフィードバック手法をセットで考える必要性を示しています。
では、実際の職場ではどう進めればよいのでしょうか。
ポイントは、
何を伝えるか
いつ伝えるか
どう伝えるか
の3つです。
1.何を伝えるか:「もっと頑張って」ではなく、期待と事実と次の行動を伝える
まず重要なのが、「何を伝えるか」です。
たとえば、
「もう少し周りを見て動いてほしい」
「もっと積極的にやってほしい」
「普通はこうするよ」
という言葉。
日本人社員同士では何となく意味が通じることもあります。
しかし、本人が「具体的に何を変えればよいのか」を理解できなければ、行動は変わりません。
フィードバックでは、大きく3つを分けると分かりやすくなります。
期待していること
実際に起きたこと
次にしてほしいこと
です。
たとえば、
「後輩から質問が来たとき、自分で対応できる内容はあなたから説明してほしい」
という期待があるとします。
その場合、
「昨日、後輩から作業方法を聞かれたとき、すぐに日本人の先輩へ聞きに行っていました」
と事実を伝える。
そのうえで、
「次からは、まず自分で説明してみて、分からないところだけ先輩に確認してみよう」
と次の行動まで伝える。
ここまで具体化すれば、本人も何を変えればよいのか理解しやすくなります。
「頑張ってほしい」ではなく、「次に何をしてほしいか」まで言葉にする。
これが一つ目のポイントです。
2.いつ伝えるか:半年後ではなく、仕事の記憶が残っているうちに伝える
二つ目は、「いつ伝えるか」です。
私たちがヒアリングしたある製造業では、半年に一度、賞与を決めるための面談を行っていました。
評価の機会そのものはあります。
一方で、企業側からは、日常的な細かいコミュニケーションや、タイムリーなフィードバックは不足しているという課題が挙がりました。
半年後に、
「そういえば数か月前のあの仕事だけど」
と言われても、本人にとっては何の行動について評価されているのか分かりにくくなります。
だからといって、毎日長い面談をする必要はありません。
むしろ、
仕事の直後:30秒〜数分程度
「今の説明、分かりやすかったよ」
「次はここまで自分でやってみよう」
と短く伝える。
そして、
週次・月次:少し長めに振り返る
「最近できるようになったことは何か」
「困っていることは何か」
「次に挑戦することは何か」
を整理する。
最後に、
半期・年次:評価とキャリアを確認する
というように、目的を分けた方が運用しやすくなります。
| タイミング | フィードバックすること |
|---|---|
| 業務直後 | 良かった点・直してほしい点を短く伝える |
| 週次・月次 | 成長・課題・次に挑戦する仕事を確認する |
| 半期・年次 | 評価結果・役割・今後のキャリアを確認する |
すべてを人事制度にする必要はありません。
まずは、その場で短く伝える習慣を作るだけでも違います。
3.どう伝えるか:「伝えた」で終わらず、相手の理解を確認する
三つ目は、「どう伝えるか」です。
外国人社員とのコミュニケーションでは、
上司側は「説明した」。
本人側も「分かりました」と答えた。
それでも実際には認識が一致していなかった、ということがあります。
経済産業省の企業向け資料でも、日本人社員が無意識に使う曖昧な表現は、外国人社員とのコミュニケーションで行き違いにつながりやすいと指摘されています。また、外国人社員をマネジメントする日本人社員側にも、効果的なコミュニケーションを学ぶ機会を設けることが推奨されています。
ここで重要なのは、外国人社員側の日本語力だけを問題にしないことです。
たとえば、
「なるべく早く」
「いい感じに」
「前と同じように」
ではなく、
「今日の15時までに」
「この3項目を確認して」
「前回と同じフォーマットで」
と具体的にする。
さらに、
「分かった?」
だけではなく、
「じゃあ、次に何をするか一度教えてもらってもいい?」
と、相手の言葉で確認してもらう。
そして、本人からも、
「難しいところはないか」
「別のやり方の方がやりやすくないか」
と聞く。
フィードバックは、上司が一方的に「伝える時間」ではありません。
会社の期待と本人の認識を合わせる時間
と考える方がよいでしょう。
ネガティブな内容だけをフィードバックしない
もう一つ意識したいのが、フィードバックが、
「ミスをしたときだけ発生するもの」
にならないことです。
問題が起きたときだけ声をかけられる状態では、本人からすると、
「上司に呼ばれる=怒られる」
になってしまいます。
できるようになったことも具体的に伝える。
「この工程、一人でできるようになったね」
「さっき後輩に説明していたの、分かりやすかったよ」
「前より報告が早くなったね」
というフィードバックも、次の行動を強化します。
経済産業省が紹介する企業事例でも、外国人社員本人の話を聞きながら評価を説明し、次の目標を設定することで、モチベーション維持につなげています。
フィードバックは「次の役割」につながって初めて育成になる
外国人社員へのフィードバックで最終的に目指したいのは、単にミスを減らすことではありません。
できる仕事を増やす。
後輩を教えられるようになる。
より大きな役割を担えるようになる。
そうした成長につなげることです。
だから、
「今回できた・できなかった」
だけで終わらず、「では、次に何を任せるのか」までつなげる必要があります。
外国人材のリーダー育成については、前回の記事でも、役割・キャリア設計、評価・フィードバック、育成・学習支援をつなげる必要性を整理しました。
今回のフィードバックは、その中でも、現在地と次の役割をつなぐ部分だと考えられます。
まとめ|外国人社員へのフィードバックは「何を・いつ・どう」を揃える
外国人社員へのフィードバックというと、
「文化の違いにどう対応するか」
に注目しがちです。
もちろん、それも重要です。
しかし、その前に会社として確認したいのが、
何を伝えるのか
いつ伝えるのか
どう伝えるのか
です。
半年に一度の評価制度を作っただけでは、日常の成長にはつながりません。
抽象的な言葉を伝えるだけでも、本人は次の行動を理解できません。
そして、上司側が「伝えた」と思っているだけでも不十分です。
外国人社員本人が、
「今、自分は何ができているのか」
「次に何ができればよいのか」
を理解できている状態を作る。
それが、フィードバックを単なる評価から、育成につなげる第一歩です。
外国人社員への評価や面談は行っているものの、「本人の成長につながっているのか分からない」「現場のフィードバックが担当者任せになっている」と感じている企業さまへ。
yuでは、外国人材の現在の活躍状況と企業側の育成環境を整理し、次の役割へ進むために優先すべき課題を一緒に検討しています。

