外国人社員が辞めずに働いている。
定期的に面談もしている。
大きなトラブルもない。
ここまでできていると、「外国人材の受け入れはうまくいっている」と感じる企業もあると思います。
しかし、もう一つ確認したいことがあります。
「この人に、3年後はどんな役割を担ってほしいのか」まで話せているでしょうか。
私たちが外国人材を雇用する企業と意見交換をしていると、日常のフォローや定期面談は行っていても、その先の役割やキャリアまでは具体化されていないケースがあります。
外国人材が定着してくれること自体がまず重要であり、特に人手不足の企業では、「辞めずに働いてくれているなら十分」となりやすい面もあります。
ただ、定着した後の姿が決まっていなければ、評価も育成も「今の仕事ができているか」の確認で止まってしまいます。
外国人社員の評価基準を考えるとき、最初に作るべきなのは評価表ではありません。
まず将来どの役割を任せたいのかを決め、そこから現在の評価基準を逆算する。
本記事では、その考え方を4つのステップで整理します。
目次
定期面談をしていても「その先」が決まっていない
外国人社員との面談を定期的に行っている企業はあります。
「仕事で困っていることはないか」
「生活面で問題はないか」
「人間関係は大丈夫か」
こうした確認は、定着のために重要です。
一方、
「3年後、会社の中でどんな仕事をしてほしいか」
「そのために、次の1年で何ができるようになってほしいか」
「本人自身は、今後どんな働き方をしたいのか」
まで話せているかは別の問題です。
私たちが企業と意見交換する中でも、外国人材について「まずは定着してくれれば」という考えから、その先の役割やキャリア設計まで十分に進んでいないケースが見られます。
yuでは、外国人材の戦力化を考える際に、
本人意向 → 目標設定 → 評価・フィードバック → 学習・実践
をつなげて考えることが重要だと考えています。
| ステップ | 会社・本人で確認すること |
|---|---|
| 1.目標役割 | 3年後に何を任せたいか/本人は何を目指したいか |
| 2.評価基準 | 何ができれば、その役割を任せられるのか |
| 3.現在地 | 今どこまでできていて、何が足りないのか |
| 4.育成 | 不足を埋めるために、どんな経験・学習が必要か |
評価基準は、この流れの中に位置づけると作りやすくなります。
Step1|3年後に任せたい役割を決める
最初に考えるのは、評価項目ではありません。
「この人に、将来何を任せたいのか」です。
私たちが意見交換したある製造業では、外国人社員への期待について、大きく2つの方向がありました。
一つは、
担当業務そのものを習熟し、より難しい仕事まで任せられるようになること。
これは主に事業部・現場側が期待している成長です。
もう一つは、
後輩外国人の相談に乗り、仕事を教え、外国人社員の中でお兄さん・お姉さんのような役割を担うこと。
こちらは、人事・総務側が期待している役割でした。
同じ「外国人社員に成長してほしい」という言葉でも、求めているものは違います。
さらに将来的には、日本人社員を含むチームのリーダーを任せたい企業もあるでしょう。
だからこそ、まず会社として、
「現場の専門人材になってほしいのか」
「後輩外国人を支える役割を担ってほしいのか」
「日本人社員も含めてチームを率いてほしいのか」
を具体化する必要があります。
その際、会社側の期待だけで決めるのではなく、本人がどのようなキャリアを望んでいるかも確認します。
たとえば特定技能人材であれば、分野や本人の希望、必要要件にもよりますが、将来的な特定技能2号への移行をキャリアの選択肢として考える場合もあります。
厚生労働省が紹介する特定技能2号の企業事例でも、1号の段階からキャリアプランを示し、リーダーへの昇格や役割付与を通じて、段階的なキャリアアップにつなげる取り組みが紹介されています。
重要なのは、在留資格の取得自体をゴールにすることではありません。
「会社の中でどんな役割を担ってほしいか」と「本人がどんな将来を望んでいるか」を先に合わせ、その途中に必要な技能・資格・在留資格を置くことです。
Step2|その役割に必要な「できること」を評価基準にする
次に、将来任せたい役割を、評価できる具体的な行動へ分解します。
ここで避けたいのが、
「日本語が上手」
「積極性がある」
「リーダーシップがある」
といった、評価者によって意味が変わる表現です。
たとえば「後輩外国人を支える役割」を任せたいのであれば、
「日本語が上手か」ではなく、
「後輩に作業手順を説明できる」
「自分で答えられない質問を、適切な相手へつなげられる」
「問題が起きたとき、日本人上司へ報告できる」
といった行動にします。
| 目指す役割 | 評価基準の例 |
|---|---|
| 担当業務を一人で担う | 品質、安全、納期、基本技能、異常時の報告 |
| 複数業務を担う | 対応可能な業務の幅、資格・技能、応援対応、判断力 |
| 後輩外国人を支援する | 作業説明、相談対応、フォロー、必要な情報共有・報告 |
| チームを率いる | 目標管理、役割分担、問題解決、日本人社員を含むチーム運営 |
ここで、日本語力も「万能な評価指標」にしないことが重要です。
日本語力そのものではなく、
「仕事の指示を理解できるか」
「異常を報告できるか」
「後輩へ説明できるか」
など、その役割を果たすうえで日本語をどう使える必要があるのかまで落とし込みます。
そうすれば、「N2だから高評価」「日本語が一番上手だからリーダー」といった単純な判断も避けやすくなります。
Step3|現在地を評価し、本人とすり合わせる
評価基準を決めたら、本人の現在地を確認します。
ここで重要なのは、会社だけが評価結果を持って終わらないことです。
たとえば会社は、
「後輩を教えられる段階にはまだ達していない」
と考えている。
一方、本人は、
「今の仕事はもう十分できているのに、なぜ次の仕事を任せてもらえないのだろう」
と思っているかもしれません。
評価基準があっても、その基準や現在地が本人に共有されていなければ、次の行動にはつながりません。
JETROも、外国人材の育成・定着において、キャリアプラン設計に加え、評価制度とフィードバックを重要なテーマとして整理しています。
ここで定期面談が生きてきます。
ただし面談で確認するのは、
「困っていることはない?」
だけではありません。
「将来どこを目指すのか」
「今どこまでできているのか」
「次に何ができれば、その役割へ近づくのか」
まで話します。
定期面談そのものが目的ではなく、本人と会社の現在地・目標認識を合わせるために面談を使うということです。
Step4|不足をOJT・資格・学習・実践機会につなげる
最後に、評価によって見えた不足を育成へつなげます。
たとえば、将来後輩指導を任せたい人について、
「作業技能は十分だが、人へ説明する経験が不足している」
と分かったとします。
その場合、必要なのは評価点を下げることだけではありません。
先輩と一緒に新人OJTを担当してもらう。
まず一つの工程だけ説明役を任せる。
必要な日本語表現を学ぶ。
といった実践機会を作ります。
資格や技能が不足しているなら、取得支援を検討します。
私たちがヒアリングしてきた企業でも、育成方法は一様ではありません。
外部の日本語講習を利用する企業もあれば、先輩外国人社員の力も借りながら、特定技能2号など次の資格・在留資格を目指す企業もあります。
重要なのは、
「日本語研修をやろう」
「資格取得支援をやろう」
から始めないことです。
先に将来の役割と現在地を確認し、
不足しているものを埋めるために必要なOJT・資格・学習・実践機会を選ぶ。
この順番なら、育成施策も目的化しにくくなります。
外国人社員だけ特別な評価制度にする必要はない
ここまで読むと、外国人社員専用の評価制度を新しく作る必要があるように見えるかもしれません。
必ずしもそうではありません。
むしろ、
「積極性」
「協調性」
「リーダーシップ」
といった曖昧な評価項目が、日本人社員についても使われているのであれば、外国人社員の評価基準を考えることをきっかけに、会社全体の基準を具体化することもできます。
外国人社員だけに特殊な仕組みを作るのではなく、
役割 → 評価基準 → 現在地 → 育成
をつなげる。
これは、日本人社員の育成にも共通する考え方です。
まとめ|評価表を作る前に、3年後の役割を決める
外国人社員の評価を考えるとき、最初に評価項目を増やす必要はありません。
まず考えるべきなのは、
「この人に、3年後は何を任せたいのか」
です。
そのうえで、
1.目標役割を決める
2.必要な「できること」を評価基準にする
3.現在地を本人と共有する
4.不足をOJT・資格・学習・実践機会で埋める
という順番で考えます。
外国人社員が辞めずに働いている。
定期面談もしている。
それは重要な土台です。
しかし、その先に、
「次にどんな仕事を任せるのか」
「その次にどんな役割へ進めるのか」
という道筋まで見えて初めて、評価を戦力化につなげることができます。
外国人材は定着しているものの、「その先に何を任せればよいのか」「評価や育成をどうつなげればよいのか」を整理しきれていない企業さまへ。
yuでは、外国人材本人と会社側の認識を整理し、役割・評価・育成をつなげながら、次の活躍段階へ進むための課題を一緒に検討しています。

