定着戦力化組織化

外国人社員の受け入れ体制とは?定着・戦力化と組織化で考える

外国人社員を採用するとき、「受け入れ体制を整えることが重要」とよく言われます。

では、具体的に何を整えれば「受け入れ体制がある」と言えるのでしょうか。

日本語研修を用意する。外国語のマニュアルを作る。住居や行政手続きを支援する。相談担当者を決める。

もちろん、こうした取り組みが必要になることはあります。

ただ、外国人材を雇用する企業へのヒアリングを重ねていくと、個別の施策をいくつ用意しているかだけでは、受け入れ体制の良し悪しを捉えきれないと感じます。

私たちは、外国人社員の受け入れ体制を考える際には、大きく2つの軸を分けて見ることが重要だと考えています。

一つは、外国人社員本人が「定着」し、その先の「戦力化」へ進めているか。

もう一つは、それを支える会社側の対応が、特定の担当者の個人技ではなく、組織として継続できる状態になっているか。

つまり、

外国人材の活躍:定着 → 戦力化

と、

会社としての運用:属人的な対応 → 組織化

という2つの軸です。

この2軸から、外国人社員の受け入れ体制について考えてみます。

受け入れ体制は「外国人向け施策の数」だけでは測れない

外国人社員の受け入れというと、入社前後の準備が注目されやすくなります。

在留資格への対応、住居の準備、生活オリエンテーション、日本語教育、業務マニュアルなどです。

厚生労働省の「事業者向け受入れ・定着マニュアル」でも、「募集」「受入れ」「就労中」のそれぞれの段階について、外国人材の職場・地域への定着に向けた対応が整理されています。

ただし、受け入れ体制を考えるうえでは、こうした施策を「実施したかどうか」だけでは十分ではありません。

たとえば、日本語研修を行っていても、職場の人間関係に悩んで本人が辞めてしまえば、定着にはつながりません。

一方、長く働いていても、何年経っても同じ仕事しか任されず、本人の役割が広がっていなければ、戦力化が進んでいるとは言いにくいでしょう。

さらに、その人たちを支えるために一人の人事担当者や通訳者があらゆる業務を抱えているなら、外国人社員が増えたときに同じ対応を続けられるとは限りません。

だからこそ、外国人社員の受け入れ体制は、

「辞めずに働けるか」
「その先で任せられる仕事が広がっているか」
「それを会社として継続的に支えられるか」

という視点から考える必要があります。

1.定着:「辞めない」ために、期待と実態のズレを見る

まず考えたいのが、外国人社員の定着です。

外国人材の離職は、「日本語が苦手だから」「日本の文化に合わなかったから」といった一つの理由だけで起こるとは限りません。

私たちが外国人材を雇用する企業へのヒアリングを行う中でも、離職や働きづらさにつながる問題は、主に次のような領域で見られました。

業務

入社前にイメージしていた仕事内容や負荷と、実際の仕事が違うケースです。

たとえば製造現場では、想像以上に身体的な負荷が大きく、実際に働き始めてから「思っていた仕事と違った」と感じることがあります。

仕事内容を説明したつもりでも、企業側が考える「説明した」と、本人がイメージできている状態は同じではありません。

人間関係

仕事そのものには大きな不満がなくても、上司や同僚との関係、職場での孤立が働き続けるうえで大きな問題になることがあります。

ある企業へのヒアリングでは、休憩時間に日本人社員の輪へ入れず、外国人社員が愛想笑いをしながら過ごしているという話もありました。

こうした問題は勤怠や業績の数字だけを見ていても分かりません。

給与

給与額だけではなく、残業や手当などを含め、「どのくらい稼げると思っていたか」という期待とのズレも重要です。

ある製造業では、企業側は適正な労働時間を守っている一方、外国人社員側には「もっと残業して収入を増やしたい」という希望があり、それが不満につながっていました。

企業に問題があるというより、企業側が提供している働き方と、本人が期待していた働き方が一致していないことが問題です。

私生活

住居、交通、病院、家族、地域での生活、相談相手など、仕事以外の環境も無視できません。

工場と自宅を往復するだけで地域との接点がほとんどなく、孤立してしまうケースもあります。

会社が外国人社員の私生活をすべて支援する必要があるという意味ではありません。

重要なのは、仕事以外も含めて本人が何に困っているのかを把握し、会社で対応するのか、外部につなぐのか、本人に対応してもらうのかを判断できることです。

定着において重要なのは、外国人社員向けの施策を増やすことそのものではありません。

本人が期待していた状態と実態の間にどのようなズレがあり、それが働き続けるうえで問題になっていないかを早めに捉えることです。

2.戦力化:「辞めない」から「任せられる」へ

外国人社員が辞めずに働いている。

これはもちろん重要です。

しかし、受け入れ体制を「定着」で終わらせてしまうと、外国人社員が何年経っても支援を受ける側のままになってしまうことがあります。

私たちは、定着のその先に戦力化があると考えています。

ここでいう戦力化とは、単に仕事のスピードが上がることではありません。

一人でできる仕事が増える。担当できる業務が広がる。後輩を教えられる。改善提案ができる。チームの中でより大きな役割を担う。

そうした形で、本人の役割が広がっていくことです。

そのためには、大きく3つの環境が必要になります。

役割・キャリアを描けること

「今の仕事の次に、何を任せたいのか」。

会社側がそれを考えていなければ、本人から見ても働き続けた先が見えません。

すべての社員に管理職を目指してもらう必要はありません。

重要なのは、本人の希望も踏まえながら、今後どのような役割を担ってもらいたいのかを会社として考えることです。

評価とフィードバックがあること

次の役割へ進むために、

「何ができるようになればよいのか」

「現在は何ができていて、何が足りないのか」

が本人に伝わっていることも重要です。

評価制度そのものが存在していても、基準や期待が本人に伝わっていなければ、成長につながりません。

成長する機会があること

日本語、資格、技能、OJT、後輩指導など、次の役割へ進むための経験を積める環境も必要です。

JETROも、高度外国人材の育成・定着において、能力を発揮し成長できる環境やキャリアプランを整える重要性を示しています。

外国人社員の受け入れを考えるとき、企業側はどうしても「困っていないか」「辞めそうではないか」に意識が向きます。

しかし、一定期間働いた後は、

「この人に次は何を任せるのか」

という問いに切り替えていく必要があります。

「辞めていない」はゴールではありません。

3.組織化:「支えられる人がいる」から「会社として回る」へ

そしてもう一つ、定着・戦力化とは別の軸で考えなければならないのが組織化です。

ここは特に重要です。

組織化は、定着した後、戦力化した後に取り組む第3段階ではありません。

外国人社員の定着・戦力化を支える会社側の仕組みとして、並行して考える必要があります。

外国人社員がまだ数人のうちは、

「外国人対応に詳しい人事担当者」

「外国語を話せる社員」

「面倒見のよい先輩外国人社員」

などの存在によって、問題なく回ることがあります。

むしろ、そうしたキーパーソンがいるからこそ、高い定着率を実現できる会社もあります。

一方で、人数が増えると状況が変わります。

私たちがヒアリングしたある製造業では、外国人社員の生活面まで親身にサポートする担当者が大きな役割を果たしていました。

しかし、外国人社員が増えた時期には、住居でのトラブルや病院への送迎などへの対応が重なり、管理側の負担が非常に大きくなった経験がありました。

別の大手製造業でも、外国人社員の増加に伴って、人事・総務による手作業中心の支援では対応しきれなくなり、一部の業務を外部の専門事業者へ切り出していました。

ここで問題なのは、担当者が熱心すぎることではありません。

むしろ、熱心な担当者がいるからこそ、会社として仕組みを作らなくても当面は回ってしまうことです。

組織化を考える際には、

外国人社員への対応として、どのような業務が発生しているのか。

誰がどの業務を担っているのか。

特定の人に負荷が集中していないか。

外国人社員が増えたとき、国籍が増えたとき、担当者が不在になったときにも回るのか。

という会社側の運用を見る必要があります。

「外国人社員を支援できる優秀な担当者がいること」と、

「外国人社員を受け入れられる会社になっていること」は、

必ずしも同じではありません。

外国人社員の受け入れ体制を考えるなら、2つの問いから始める

では、自社の受け入れ体制について考えるとき、何から見ればよいのでしょうか。

すべての施策を一度に整える必要はありません。

まず、2つの問いを分けて考えることをおすすめします。

一つ目は、

外国人社員は、今どこまで活躍できているか。

早期離職が起きているのであれば、まず定着に関わる問題を見る。

定着しているのであれば、任せられる仕事や役割が広がっているかを見る。

二つ目は、

その状態を、会社として無理なく支え続けられるか。

優秀な一人の担当者に依存していないか。

外国人社員が増えても同じ運用を続けられるか。

担当者が異動・退職しても対応できるか。

この2つは別々の問題です。

たとえば、外国人社員の定着率が高くても、それを一人の担当者が支えているのであれば、外国人材の「活躍」という面ではうまくいっていても、会社の「運用」という面では課題を抱えている可能性があります。

逆に、役割分担や相談体制が整っていても、外国人社員が仕事内容や給与への不満から次々と辞めているなら、組織化よりも先に定着の問題を深掘りする必要があります。

自社がどこに課題を抱えているかによって、最初に取り組むべきことは変わります。

まとめ|受け入れ体制とは「辞めない・任せられる・会社として回る」を実現する仕組み

外国人社員の受け入れ体制というと、日本語研修、生活支援、マニュアル、相談窓口など、「何を用意するか」という話になりがちです。

しかし、施策そのものは手段です。

私たちが重要だと考えているのは、

外国人社員が辞めずに働けているか。

その先で、任せられる仕事や役割が広がっているか。

そして、

それを特定の誰かの個人技ではなく、会社として支え続けられるか。

ということです。

外国人材の活躍という軸では、定着から戦力化へ。

会社の運用という軸では、属人的な対応から組織的な運用へ。

この2つを分けて見ることで、「外国人社員のために何かしなければ」という漠然とした受け入れの議論から、自社が本当に改善すべき課題が見えやすくなります。

外国人材を「採用できる会社」から、「活躍してもらえる会社」へ。

そして、その状態を一部の社員の頑張りに頼らず続けられる会社へ。

受け入れ体制を整えるとは、そのための仕組みを作っていくことだと私たちは考えています。


外国人材を雇用しているものの、「定着」「戦力化」「会社としての運用」のどこから改善すべきか整理しきれていない企業さまへ。

yuでは、外国人材本人と企業側の双方から現状を整理し、優先的に取り組むべき課題と改善の方向性を一緒に検討しています。

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株式会社yu
執筆・監修|外山 一成

株式会社yu 代表。経営コンサルティングで培った課題整理の経験と、日本人・在留外国人双方との継続的な接点をもとに、外国人材の定着・戦力化・組織化を支援しています。